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「主張」

※機関誌「宣教」(2010年9月号)「主張」欄より


 和歌山連合長老会の課題


和歌山連合長老会では、この度 南紀の台教会の設立という喜びを 与えられました。しかし、ほとん どの教会は、この設立したばかり の教会と同じような規模となって います。地域の過疎化や少子高齢 化が地方の教会を直撃していると いう現実があります。かつて、あ る牧師に私が仕えている教会の様 子を話したところ、「それは、開 拓伝道的な状況だ」ということを 言われました。それならば、開拓 伝道のつもりで教会の形成をして 行くことが課題になると言ってい いでしょう。
振り返ってみますと、和歌山連 合長老会加盟の諸教会の多くは、 アメリカのカンバーランド長老教 会から派遣されてきたへール宣教 師兄弟(以下ヘールと略。ヘール の活動については、季刊『教会』 第六五号に中山昇著「A・D・ヘー ルとJ・B・ヘールの足跡を訪ね て」という簡単な紹介がある)の 活動によって建てられました。そ のヘールの活動を振り返りながら、 今後の和歌山の伝道を進めて行く ことが大切に思われます。そこで、 ヘールから学ぶべきものとして、 特に三点を以下に掲げることにい たします。
第一点は、当時の宣教師たちの 多くが人口の集中する都市部の伝 道に力を注いだのに対し、ヘール はあえて地方の伝道を志したこと です。そこに主の召しを見たとい うことです。そのことは、しかし、 多くの宣教師たちが試みなかった ことを試みることであり、それは 未知への挑戦(チャレンジ)と言 うことが出来るのではないでしょ うか。地域の過疎化によって教会 が衰退して行くのが今日の現実だ とすれば、これまでのやり方を繰 り返すだけではなく、これまで試 みられてこなかったことを試みる 挑戦の姿勢が必要でしょう。
しかし、これから第二点に入り ますが、ヘールの伝道は、無計画 なものであったかと言えば、そう ではなく、むしろしっかりと構想 を立ててのものでした。そのこと をここで詳しく申し上げることは 出来ませんが、今後の和歌山の教 会形成のために必要と思われる一 点だけを挙げますと、ヘールは個々 バラバラに教会を立てようとした のではなかった、ということです。 このことは当然のように聞こえる かも知れませんが、和歌山連合長 老会のこれまでの二十年あまりの 歩みを振り返りますと、教会の一 体化のために随分労苦をして来た ように思われます。先輩の牧師た ちは、皆信仰告白においては一致 していました。しかし、牧師同士 が信仰告白で一致をしていても、 それでそれぞれの教会が一つになっ ているかと問うと、そうとは限り ません。連合長老会の発足は、中 会の形成と言っても差し支えはな いでしょう。和歌山連合長老会の 教会が一致した信仰告白によって 立てられているなら、そこに加盟 している諸教会が一つの中会とし ての歩みを共にして行けるように 形成されて行くことが今日の課題 となっております。
三番目に、ヘールの伝道の基本 は、いつも信徒と共にということ であった、という点です。先の中 山氏の論文から、J・B・ヘール の言葉を引用いたします。「最初 から、われわれ自身が働くだけで なく、できる限り多くの人を働き に協力させることがわれわれの願 いであった」。連合長老会は、長 老制度によって教会を形成して行 く群であります。これは推測にな るかも知れませんが、信徒が教会 の業を牧師にまかせっきりにして いるようでは、そこに長老制度の 教会は立たないのではないでしょ うか。開拓伝道というものを考え る場合、最初から長老制度の形が 見えるわけではありません。しか し最初から、信徒が教会の業を牧 師と共にして行くことは、将来そ の教会に長老制度の形を見るため には不可欠ではないでしょうか。 そのためには、牧師が自己を抑制 することも必要でしょう。


粉河教会 田中牧人